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抗体誘導ペプチド

Antibody Inducing Peptide

背景

 超高齢化による社会構造の変化や抗体医薬品など高価な医療の出現によって、本邦における医療の在り方は大きく変わりつつあります。コストや効率などによる治療法の選択肢を増やし、医療の質を保ちつつ医療費を抑制することが求められており、また、疾患そのものをいかに予防していくかということが、今後の課題として重視されています。
 大阪大学大学院医学系研究科 健康発達医学寄附講座 中神啓徳寄附講座教授は、生活習慣病に対するワクチンを開発すればこの課題を解決できると考え、そのための基盤技術の研究を開始されました。当社は、中神寄附講座教授との共同研究を実施し、ヒトの体内で抗体を産生させる革新的な抗体誘導ペプチド「FPP003」及び「FPP004」を創製しました。

メカニズム

 独自の技術である抗体誘導ペプチドは、標的タンパク質(病気の原因となるタンパク質)の働きを阻害する抗体を体内で産生させる機能性ペプチドです。当社は、免疫システムに標的タンパク質の情報を記憶させることで、数ヶ月に一回の投与で抗体を維持し、薬効を持続させる長期作用型医薬品として、抗体誘導ペプチドの研究開発を進めています。
 獲得免疫システムを医療へ応用した事例としては、外来病原体(インフルエンザ、BCGやポリオ等)に対する感染症予防ワクチンが広く普及しています。感染症予防ワクチンも、獲得免疫システムに病原体の情報を記憶させることで、ワクチンの種類によっては、数ヶ月間から数年間、場合によっては生涯にわたって予防効果を期待できる医薬品です。
 同じ獲得免疫システムを利用していますが、感染症予防ワクチンと抗体誘導ペプチドの主要な違いの一つは、感染症予防ワクチンが外来病原体を標的とするのに対し、抗体誘導ペプチドは患者体内の自己タンパク質を標的としていることです。獲得免疫のうち「液性免疫」(抗体産生)のみを選択的に活性化させることから、当社は、この機能性ペプチドを「抗体誘導ペプチド」と名付けました。
 ワクチンによる抗体産生には、B細胞を活性化するだけでなく、抗原提示細胞およびヘルパーT細胞を活性化することが必要です。抗原を取り込んだ抗原提示細胞(樹状細胞)が自然免疫活性化作用により十分に活性化され共刺激分子とともに抗原をヘルパーT細胞に提示します。このときに抗原提示細胞が提示するのは、「ヘルパーT細胞エピトープ」と呼ばれる抗原分子内のペプチドです。続いて、共刺激分子とともに提示されたヘルパーT細胞エピトープに結合するT細胞レセプターをもつヘルパーT細胞が活性化され、同じ抗原を取り込み提示しているB細胞を活性化し、抗体産生を誘導します。つまり、抗体産生誘導には、「ヘルパーT細胞エピトープ」を抗原内に含むことが必要です。一般的には、この「ヘルパーT細胞エピトープ」を含む抗原性の高いタンパクをキャリアとしてB細胞エピトープ(抗体が認識するペプチドや分子)を結合させてワクチンを構成します。近年開発された自己タンパクに対するワクチンでは、キャリアとしてKeyhole Limpet Hemocyanin (KLH)、Tetanus Toxoid (TT)、Diphtheria Toxoid (DT)などが使用されています。これらのタンパクは抗原性が高い一方、キャリアタンパク質に対してアレルギーや自己免疫反応といった副反応を引き起こしたり、ターゲットよりもキャリアタンパク質に対して強い免疫反応を誘導したりすることが懸念されます。また、ランダムな化学反応によりB細胞エピトープをキャリアに結合させるため、均一に導入することが困難であり、品質コントロールが難しいことが報告されております。

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 キャリアペプチドAJP001は自然免疫活性化作用とキャリアとしての機能を併せ持つ20アミノ酸からなる機能性ペプチドです。AJP001とB細胞エピトープを結合させたペプチドワクチン(抗体誘導ペプチド)は、樹状細胞に取り込まれて自然免疫活性化作用により樹状細胞を活性化し共刺激分子を発現させます。また、AJP001自身がヘルパーT細胞エピトープとしてヘルパーT細胞に提示され、ヘルパーT細胞を活性化します。AJP001とB細胞エピトープを結合させた抗体誘導ペプチドを取り込んだB細胞はAJP001を提示し、これを認識した活性化T細胞がB細胞を活性化し抗体産生を誘導します。AJP001とB細胞エピトープを結合させた抗体誘導ペプチドは合成ペプチドであり品質コントロールも容易です。また、KLH等のキャリアタンパク質とは異なり、AJP001自身に対する抗体産生はなく、B細胞エピトープ特異的な抗体のみを誘導することが可能です。ペプチドワクチンを投与する場合、自然免疫活性化のために別にアジュバントを混合して投与することが必要ですが、AJP001はそれ自体が自然免疫活性化作用をもつため、アジュバントも不要です。

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差別化のポイント

 <優位性>
抗体誘導ペプチドは、疾患関連の標的分子を阻害する抗体を体内で産生させ、持続的に薬効を発揮するように設計されています。抗体医薬品は高い効果を示すものの、高額な薬剤費が患者様のアクセスを阻害しております。更には、医療財政への悪影響も深刻な社会問題となっております。これに対し、バイオ製造施設への多額の投資が必要な抗体医薬品と比べ、抗体誘導ペプチドは安価な代替薬になることを期待でき、患者アクセスの促進、医療財政の問題に対する改善効果を期待できます。

開発意義

 抗体医薬品は、ジェネンテック社がHER2を標的とした抗体医薬品「トラスツズマブ」を開発したことから始まり、2001年にFDAが世界で初めて承認しました。抗体医薬品は標的となる抗原に対して特異的に結合するため、副作用が少ない効果的な医薬品として期待されており、これまでに日欧米にて50種以上の抗体医薬品が承認されております。一方、抗体医薬品は、高額であることが課題であり、医療財政への影響が議論されております。抗体誘導ペプチドは、抗体医薬品の代替となりえる手法であり、抗体医薬品と比較し、製造費を抑えることが期待できるため、医療財政を好転させる革新的な技術開発と考えます。さらには、薬価の観点から抗体医薬品では標的の対象から除外されていた生活習慣病に対する治療が可能となれば、これまでの医薬品開発の考え方が大きく変わる可能性が秘められているテーマであると考えます。

(「抗体誘導ペプチド」は当社の登録商標です。)

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